ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ (講談社選書メチエ)

ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ (講談社選書メチエ)の詳細

「ファクト」がない取り留めのないない話題が続くが、唯一「犬のお伊勢参り」が興味を引いた。江戸期の日本社会は、現代社会では想像を絶する「犬のお伊勢参り」があった。その当時の「犬と人間の関係」は現代のそれとは隔絶と言っていい程、異なっていた。犬と人間は、里犬（共同体の犬）と村里（村落共同体）の関係であった。子犬を管理していたのは、村の子どもたちであり無害な共存者であった。無論、泥棒は里には立ち入れない。江戸期は既に、「公」の観念が確立していた。その体現する存在が、「お伊勢参りする犬」であった。一例として、房州からお伊勢参りした犬の首には、行きに３００文を掛けていたが帰った時は３０００文となっていた。これは、傍証のある確かな事実であるが近代人の司馬遼太郎には理解不能であった。大江戸の日本社会は、もの凄い社会であったのだ。今では、犬の個人所有が法制化され繋いで飼うのが状態となった。お互いに何んと惨めなことか。人が動物を飼育するには、その動物との協同作業が必要であり、共通の「言語」を洗練させた。そして、文字言語が人間特有の「意識」を作り出した。オーストラリアのアポリジニは、祖先の霊のようなもの、妖精のようなものの感得あるいは夢のお告げつまり、夢を対象化する意識（心）を持っていた。それは、「ドリーミング」としてやって来る。ただ、意識しすぎると多分、ドリーミングの場所右脳側頭部は意識に隠れ、神はやって来なくなった。これは、現代人にはよく解る。知偏重で情が働き難くなったのである。