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つながりの作法同じでもなく違うでもなく (生活人新書)
によって 綾屋 紗月
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同じ著者たちによる『発達障害当事者研究』に較べると,新書版で短いせいもあるだろうが,著者たちが「当事者研究」でめざすところをより意識的に明快に記述していて,読みやすかった。最近,高機能自閉症やアスペルガー症候群の当事者の人やその家族からお話を聞かせていただく機会があったのだが,その内の何人かは,同じアスペルガーと言っても一人一人ものすごく違うので,単純にひとくくりに考えないで理解をして欲しいと強調されていたことを思い出す。著者の一人,綾屋さんの記述と重なるものである。当事者研究の可能性を論じているところで,マジョリティとマイノリティの関係を三つの世代に分けつつ,「治療の論理」(多数者である健常者に囲まれたマイノリティ第一世代)でもなく「運動の論理」(マイノリティで集まった第二世代)でもない「研究の論理」(マイノリティの中でも多様性を認め合う第三世代)を導入することで,本当の意味で「わたし」を立ち上げられる可能性ができてくるという議論は,なかなか説得力があるように感じた。人間は,集団や社会を作って生きていくしかない以上,人と人との関係の中で勢力の違いや権力関係が生じることは避けがたいし,そのことそのものが単純に悪いわけではない。誰かが責任者になりリーダーシップを発揮しなければ社会も集団も動いていかない場合が多い。とはいえ,対人援助や発達支援といったソフトな領域においても,援助する側とされる側に権力関係があることに,援助する側は無頓着であることも多い。援助を求める当事者たちが真に求めていることは何かということにアプローチする上で,当事者研究は大きな可能性を秘めていると言えるのではないだろうか。いや,援助のあり方や概念そのものに変更を迫るものになるのかも知れない。読み終えて,一つ課題だと感じたのは,当事者研究を少なくともそのままの形では行えないような当事者たち,重度の障害者や非常に幼い子どもたちの場合には,どのようなアプローチがありうるのかということだ。これは,ここに書くようなことではないかも知れないが,ひょっとしたら,著者たちに何かアイデアがあるかも知れない。ひそかに期待しておこう。
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